Asrock製マザーボードでRyzen9000シリーズのCPUが起動に失敗/故障する問題について


※はじめに

2025/05/13現在も正確な原因が分かっていない問題になります。
同様の問題に悩まされている方がいらっしゃればReddit等で最新の情報を追いかけてください。
 ->2025/06/05 Asrockが声明を出し公式に問題を認めました。
  それに合わせて記事の内容を一部修正しています。




■問題の概要(2025/06/12加筆及び修正
・Asrock製マザーボードでRyzen9000シリーズのCPUを使用すると起動しなくなる、突然死する問題がある。
※Asrock X870 steel legendやB650 steel legendなどの製品でRyzen9800X3D、9700Xを使っているなど。9000シリーズ全てに該当します。

・この問題はAMD及びAsrockも認識しているが正確な原因は不明。
->Asrockからは対策したBIOS(※リンクはB650の奴)を配布しているが効果なし・再発したとの報告もあり(※ただし私の個人的な意見ですがその対策BIOSを入れた時点で既にCPUにダメージがあったのではないかと考えています

・原因:Asrockのマザーボードで過剰な電圧設定がされておりCPUにダメージを与えている。(2025/06/12加筆)
 ->Asrockの声明ではPBO(CPUのクロックをブーストさせる機能)の設定を攻めた設定にしてしまっており、それによってCPUに高い電圧負荷がかかっていた可能性があるとのこと。
  ただしPBOの設定をオフにしていた私が二度もCPU故障を経験しているためPBOの設定有無にかかわらずだと思います。
  BIOS上では確認できない隠れ電圧設定が高いという情報があるためBIOS設定を編集するだけでは対策不能と思われます。
 
・この事象の共通点としてEXPO設定(メモリのOC設定)が入っていると事象が発生しやすいようだが、関係なく問題が起きてる人もいる。
 ->EXPO設定によってSoC電圧が高まり、高電圧によってCPUにダメージが入っている?WHInfo等で高い数字を観測した事例がある。
  ->EXPO設定をONにした場合早く事象が発生。その理由は上述の通り電圧が高まるためCPUが早期に故障してしまうという裏付けとなった(2025/06/12加筆)

・SoC電圧が瞬間的に高くなる事があり制御不良による過電圧による故障が発生しているのかも。
 ->SoC電圧は関係はあるものの実際にはSoC電圧意外も関係しており、HWInfoからでは確認できない隠れ電圧も影響があった。(2025/06/12加筆)


・参考情報
Reddit
https://www.reddit.com/r/ASRock/comments/1iui7lx/9800x3d_failuresdeaths_megathread/



・2025/06/12加筆。
 ->ちょっと詩人すぎて気になるけど概要としてはわかりやすい。




■対策(2025/06/12大幅修正)


1.Biosのバージョンを3.25(一部マザーボードは3.26)以上に上げること。


Biosのバージョンを確認し3.25未満の場合は3.25以上にアップデートする。
BIOSのバージョンの確認の仕方はPC起動時にF2、またはDelキーを一秒感覚程度でとりあえず何度も押してるとBIOS画面を開けるのでそこにBIOSバージョンが記載されている。



上記スクショの例だと3.20。



最新BIOSのダウンロード方法は自分の使っているマザーボードの名前+BIOSとかで検索。

渡しの場合はB650 Steel Legend WiFiを使っているので B650 Steel Legend WiFi BIOS とかで検索すると公式のページが出てくるのでサポートからBIOSのボタンをクリックすればダウンロードページに辿り着きます。



B650 Steel Legend WiFiの例。ダウンロードのグローバルを選択すれば該当のBIOSバージョンのファイルが手に入る。
これはあくまでB650 Steel Legend WiFi用なのでそれ以外のマザーボードでは使えないので注意。


BIOSアップデートのやり方・・・についてはすみません。編集の時間がなくなってしまったので次回更新します・・。




以下は2025/05時点の古い情報になります。


■詳細

概要で述べた通りAsrock製マザーボードでRyzen9000シリーズのCPUを使用している環境でPCが起動しなくなるという問題が報告されています。
実際私も下記の構成のPCを使っていますが2025年1月1日にシャットダウンさせたPCが起動しなくなり、2025年5月6日に使用中のPCが突如フリーズし、電源ボタン長押しによる強制シャットダウンも効かずPC背面から電源ユニットの電源を切ってその後立ち上がらなくなるという問題が発生しました。

OS:Windows 11 Pro
CPU:Ryzen 7 9700X
グラフィック(カード):MSI RTX4070 Super Gaming X SLIM Whit
CPUクーラー:Noctua NH-U12A
マザーボード:ASRock B650 Steel Legend WiFi
メモリ:Crucial DDR5-4800 32GB (16GBx2枚)
SSD:WD Black SN770 2TB (m.2)
電源ユニット:Silverstone Essential Gold 750W

どちらの時もCPUを新品のものに交換した後は正常に起動しています。

共通しているのはCPUが完全に故障しBIOSすら立ち上がらなくなるという事です。
Redditのメガスレッド等で情報を見ると故障のタイミングには一貫性はありませんが、BIOSまでたどり着けなくなるのは共通しているみたいです。

この問題は特に9800X3DのCPUを使用している人からの報告が多いですが9800X3Dに限定された話ではなく9700Xや9950Xなどでも事象が発生したことが報告されています。
またこの問題自体は少数ながらもAsrock以外からもASUSやMSIのマザーボードを使用しているユーザーからも同様の事象が報告されていますが割合としては8〜9割Asrockという偏りになっています。

結局何が起きているのか。
今現在最も疑われているのは電圧の自動制御におかしな動きがあり瞬間的に過電圧となりCPUにダメージを与えているのではないかと言われています。

■参考動画


色んなメーカーのマザーボードで検証した所、Asrockのマザーボードが不安定な挙動を示しており、アイドル状態でも瞬間的に高いSoC電圧を定期的に記録しているとのこと。
そのため上記動画の人はSoCの電圧調整に対して何かしらの対策を行うことが推奨されるとコメントしています。

実際私自身も修理から戻った後HWInfoで眺めていたのですがデフォルトでSoC電圧が1.19で張り付いている所に何故か瞬間的に1.21Vとか記録したのを確認しており
なんかSoC電圧の制御が不安定だっていう感じはありました。

実際の所上の動画のサムネにも出ている1.27vの電圧は致命的に高いのかと問われると致命的というわけではないのですが、高いか低いかで言えば間違いなく高く、映画鑑賞といった
比較的低負荷な状態でもそうなるのであればゲーム時にもっと高いSoC電圧を叩き出してしまってもおかしくはないかもしれません。もしそれで1.3vを超える電圧を叩き出せば
それは間違いなくCPUにダメージを与えるものとなるでしょう。


■対応策

上記詳細をまとめるとSoC電圧が高くならないように制御する事が対策となります。


1. BIOSアップデート
一応この問題対してAsrockからは対策BIOSを配布。
また、故障理由について某ブログの人と対談した記録があるのですが・・・実際の状況とは大きく異なっており、またその発言も物議を醸していて正直世間一般的には疑問に思われています。

【ニッチなPCゲーマーの環境構築Z】
ASRock、Ryzen 7 9800X3D環境でPCが起動しなくなる不具合についてアナウンス。
改善する3.20ベータBIOSを公開。疑問点は残る [Update 1: ASRockからの回答を追記]


AsrockはCPUは壊れていない、正常に動作している所をBIOSアプデしたことが起因で動かなくなっていると言っていますが
Redditを見ても私のケースでもBIOSアプデは勿論していませんしCPUを他マザボに移し替えても起動しないんで私目線では「いや、嘘やん」っていうのが本音といいますか感想です。
(※私のCPUは9700Xですが9800X3Dを使用しているユーザーも上記同様にBIOSアプデしていなくても事象が発生したという報告が沢山上がっています

ともかく、事象発生後にBIOSを3.20にアップデートすれば直るというお話でしたが、直ったという報告は私が調べた限りでは20〜30%というふうに見えています。
ではBIOSアップデートは意味がないのか?っていう部分については一応意味はあるっぽいようでRedditで3.20とそれ以前でSoC電圧のスパイクの頻度に違いがあるらしく
平たく言ってしまえば3.20の方が安定しているように見えるとのことです。
下記のと比較するとそこまで大きな対策にはならないかもしれませんが一応問題を認識した後に配布したBIOSなのでまぁいれるだけの価値はあると思います。実際私は入れました。




UEFI BIOS Version:の所の末尾が3.20になっているのが分かるはず。ここの数字を見れば今現在の自分のBIOSバージョンがわかります。



2.EXPOの無効化

次にEXPOの無効化が推奨されています。
平たく言えばメモリのオーバークロックです。SoC電圧を高くする要因の一つであり、EXPOを使用していると故障頻度が高くなるという報告は
私の推察ですがEXPOを使用することで元々のSoC電圧が1.25とか高くなり、そこに制御不良によるスパイク的な過電圧がかかった結果頻繁に1.30を超えるような電圧となり
故障率が高まっているのではないかと予想しています。
EXPOを無効化したからといってスパイク的に高電圧になるのを抑えることは出来ないかもしれませんが、EXPOを無効にすることで安全マージンを作っておくことは出来ると思います。




EXPOはマザーボードによって設定項目名が異なる事も多いですがAsrock B650 Steel Legendの場合はOC Tweakerの項目の中にあるDRAM Profile Configurationにあります。
その設定のDRAM Profile SettingがAutoになっていればOKです。
ちなみにデフォルトではAutoになっているはずなので意図的に使用していない限りは通常いじる必要はない項目です。

ただ私の調べだとどうもメモリの転送速度が5600以上のメモリを使用しているとこのSoC電圧のスパイク頻度が妙に多いという疑いがあります。
実際試しにDRAM Frequencyの値を5600から4800に下げた所えらいSoC電圧が安定した(スパイクしなくなった)のでAsrockが言っていたメモコンと何か関係があるんですかね・・・。
正直眉唾かもしれませんが一応おまじないレベルに設定しておくのは悪くないかもしれません。



設定箇所は同じくOC Tweakerの中にあります。選択して希望するスピードに数字を合わせればOKです。(スクショの例だとDDR5-5600からDDR5−4800に下げている



3.SoC電圧のマニュアル設定

恐らく一番有効な策と思われます。
SoC電圧の最大数値はデフォルトでAutoとなっておりこれが一番悪さしている可能性があります。
このAuto設定を外し指定のSoC電圧に固定させてしまう事でスパイク現象を低減させ、安全マージンを作ることが出来ると思われます。

Reddit内では一般的には1.10〜1.15で設定する人が多く見られました。
あまり低く設定しすぎると(CMOSクリアしない限り)起動しなくなるのでこの辺はちょっとチキンレース気味があります。
一応私は1.15を選択しています。



これもまたOC Tweakerの中にSoC/Uncore OC Volageという項目があり、初期はAutoという表記になっているので手入力で1.15と入力すればOKです。




実は最初1.20で試してたんですが安全マージン取りたかったので後から1.15に下げました。
動作は極めて安定しています。



4.PBOとCPBの無効

CPUのクロック動作を定格に固定させブーストさせない設定になります。
EXPOと比較するとCPUへの負荷を極限まで下がりますがマックスパワーはだいぶ落ちます。
ただ以前こちらの記事にも書いてたのですがPBOとCPBが有効化しているとデスクトップ画面放置のアイドル状態でもなんかやけにCPUファンがぶんまわって
CPU温度が70℃越えとかを記録する凄まじい不安定っぷりを見せてくれたので私はずっと切っています。
Redditを見てもやはりPBOについては過電圧の一因として怪しむ声も見かけます。基本的には項目3のSoC電圧のマニュアル設定していれば気にする必要はないかもしれませんが
あまりに挙動が不安定すぎて私は心配(ry

究極の安全運転を目指すなら切っておくに越したことはないでしょう。4K画質で遊びたい!とかいう要望があるとこの項目を切るのはちょっとあれかもしれませんが・・・。

切り方は今度はAdvanceに Core Performance Boost(略してCPB)、Precision Boost Overdrive(略してPBO)という項目があるのでこちらをDisableにすればOKです。
なおこちらはデフォルトでAuto(有効化)されていいます。









■まとめ

Asrockが悪いのかAMDが悪いのか不明ですが、現状明らかにAsrockマザーボード+Ryzen9000シリーズのCPUで故障報告が多いです。
SoC電圧周りの制御に何かしらの問題を抱えているから故障しているのか、その確たる原因はメーカー発表しない限りわかりようがないですが少なくとも今日この記事を書いてる今時点では一番疑われている箇所になります。




実際上記設定をした後にモンスターハンターワイルズをRTX4070Superがフル稼働するようなグラフィック設定で遊んでいますがCPU周りの挙動は安定しています。
温度も最大で58.2℃と低く、問題のSoC電圧も1.141Vが最大とスパイクもせず安定しています。
VRゲームでAfter the fallなど比較的高負荷なゲームを遊んでいるときも温度は61〜63℃程度、SoC電圧もずっと1.141で安定しています。

結局この設定でもう故障しなくなるのかどうか、それは神のみぞ知るといった所ですが、やる価値があることを祈っています。
少なくともSoV電圧が定期的にスパイクしていたのをこの目で見たので危険域に突っ込ませないという意味でこの対応策を取るのは少なくとも間違いではないと思っています。

なおReddit上でSoC電圧を下げたりEXPOを無効にしても故障したという声自体はあります。ただそれが最初からそのように動作するよう設定してなお壊れたのかどうかいまいち詳しい状況は分かっていません。

さてはて、これが正しかったかどうか分かるのはだいぶ先になりますが・・・。
少しでも誰かの役に立つことを祈って。また私の備忘録として・・・。

それでは。


戻る